小説、第4話、東京の赴任・若手Drとの思い出



東京出身の医者が、田舎の病院へ赴任して、
そこの、看護婦さんと、結婚する話です。

もう一つの思い出の出来事があったので、書くことにする。
東京の大学からの派遣先病院が新潟県内、
山間部の中小病院でも、他に数件ある。
そういう病院に、単身(独身)で赴任した先生は、病院の官舎が完備され、
地元の方からの差入れも多くて、ほとんどお金がかからないのである。
長岡から車で、90分くらいの日本有数の豪雪地帯にその病院は、あった。
名前は、TN病院。そこへ、卒後2年目の東京生まれ、
東京育ちの鮫島先生が赴任してきた。口数の少ない、
気の弱そうな感じのする先生であった。

ただ、優しい性格で、夜は、さみしいからと、
麻雀の、お相手をしてくれと、言ってきた。
私の官舎は広いから、泊まっていけば良いというのである。
最初は、遠慮していたが、麻雀に誘われる日が多くなり、
泊まる様になった。
その際は、必ず、旨い、酒の肴を準備して、訪問する事にしていた。
それが、好評だったのか、良くお誘いがかかる様になった。

そして、数週間後、鮫島先生が、真面目な顔で、
ちょっと、相談にのってと、言われ、話を聞いた。
それによると、この町の町長の娘さんと、見合いをしないかと、
町長に、直接、言われたというのである。
むげに、断るのも、何だから、会おうと思うんだけれど、
どうしたら良いかなーとの相談だった。
そこで、いくつか質問した。先生に、今、
つきあってる人いるのと聞くと、別に、いないと。
町長の娘さんと、会って話したことあるのと行くと、
挨拶程度であり、2人だけで話した事とはないと。

そこで、ちょっと、立ち入った事を聞いて言い?、と問いかけた。
どうぞと、先生が言うので、単刀直入に、先生、
ここの病院の看護婦さんで、気に入った娘、
いるんですかと言うたずねた。
彼は、いないこともないけど、なにせ、まだ、来て間もないし、
良くわからないからと。そこが、肝心なんですよと伝えた。
気に入った看護婦がいれば、仲良くすれば良いし、
そうすれば、町長の娘の話も、簡単に断れると言った。
それとも、町長の娘と結婚して、将来は、町会、
県会議員と政治家をめざす事もできる。
ここの病院の院長だって、夢じゃない。
先生の考え、次第でも、現段階では、どうにでもできると答えた。
彼いわく、僕は、政治家には、向いていないし、そんな気もないと。

それなら、話は早い、気に入った看護婦さんをつくれば。
土日休みに、長岡とか、新潟とか、東京とかで、
デートして、気に入ったら結婚する。
この町か、大都会か、どこでも良いから、開業したらと、
アドバイスした。
先生が、そのアイディアの方が良いかもしれないと
言い出した。わかった、その線で行くよと。

この病院は、実は、東京の大学では、人気がなく、
みんな、来たがらないんだと言っていた。
鮫島先生は、都会育ちで、むしろ、ここの自然が好きで、
気に入ってるとの事。
数年、ここで勤務すれば、金も貯まるし、開業資金も十分貯まると。
それでいいんじゃないと、私が言うと、じゃー、
それで行こうと、彼は言った。
この話は、くれぐれも、内緒でね、といわれた。 
もちろん、他言しない事を約束した。

その数ヶ月後の日曜日、新潟で、鮫島先生と、
仲の良い看護婦さんと、食事をする事になった。
挨拶をして、席についた。彼女は、感じの良い、
はきはきした印象の、明るそうな、可愛い人でした。
静かめな、鮫島先生と、お似合いのカップルに見えた。
3人で、いろいろ、話をした。
それによると、彼女は、スキー、テニスと、スポーツ万能で、
特にスキーは、県の代表だったとの事。
その後も、仲良くやっているようだった。その数年後、
風の便りで、結婚して、病院の近くで医院を開業した様です。
(めでたし、めでたし・・・)

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