第十一話:入社と退社


第十一話:入社と退社
高専を卒業して、学校推薦の,大手化学メーカーの研究所に、
就職することができた。

 自宅からバスを乗り継いで六十分の所に、その研究所は、あった。
 仕事は、あらかじめ、年間計画が、立っていて、
決められた実験を、同じ手順で行い、報告書を提出するだけの事であり、
自分の考えを、差し挟む所は、全くないのである。
そして午前十時のおやつがでて、三十分の休憩。
午後三時も、同じ時間が、設けられている。
まるで幼稚園のような、感じである。

中でも、一番、気に入らなかったのは、研究員の女性である。
目を見張る様な、美人がいるか、最初、いろいろ探したがいない。
では色っぽくて、付き合いたくなる様な、いい女は、と見てみるが、
全く反対のタイプの女性ばかり、であったのである。
働く意欲を失うのに、そんなに、時間がかからなかった。

 そして一番、嫌だったのは、全く、自分の実力を、
発揮する場所がない事であった。
 入社、数週間後、先輩に、飲み会に誘われ様になった。
参加してみると、最初は、一番エリートだと、
自画自賛してるグループの歓迎会であった。
 我々を、見下した態度が、気にいらず、
以後、一度も行くことはなかった。
 数日後、また、別の飲み会に、誘われた、これは、第二グループだった。
 その他に別のグループにもさそわれた。
 それは、第三グループで、我々と結束して、地位向上を、
図っていこうと、訳のわからない事ばかり言う、変なグループだった。
 要するに、学閥の仲間に、入れてやる、ということだった。
 全く興味がないというよりも、反吐が、出るような、
連中の話が、嫌でたまらず、半年くらいして、推薦入社の会社に、
辞表を出すという、傍若無人の行動に、出たのであった。


退社後、まもなく、第一次オイルショックがおこり、
就職活動は超氷河期になり、良い条件の所がなかった。
 これが天罰なのかと落ち込んだ。
 何とか、就職できた先は、大手印刷会社の子会社で、
 インク製造の職場であった。
 その当時、ブラック企業ばかりで、この会社も
基本給料と同じくらいの残業手当が出る程、残業が多い会社であった。 
 具体的には、月の残業時間が二百時間を、超えるのであった。
わかりやす言うと毎日、日付が、変わっても、働かされたのである。
 我々の同期の、高専卒の連中で、私の十一ケ月働いたのが、
一番長く、 数か月ごとに、同期の仲間が、辞めていったのであった。
 私は、体力だけは、自信を持っていたが、二回目の検診で、
血尿が見つかり、入院する事になったのであった。 
 退院後、上司に呼ばれ、残業ができなければ、辞めてくれないかと、
言われる始末で、嫌気がさして、すぐに退社した。

コメント

このブログの人気の投稿

うまい日本酒の話1:越乃寒梅

Episode 35: Friends of the rehabilitation hospital

Educational reform by enriching children's halls nationwide