第七話:家庭教師をした思い出


第七話:家庭教師をした思い出:Memories of being a tutor
 そして、話を変えて、私の家庭教師をした時の話をしよう。
 市営住宅の入って、高専に合格のお祝いに、私の母のお兄さんが、
市営住宅の庭に、6畳のプレハブを建ててくれたのである。
そこを私専用の勉強部屋として使わせていただいた。
 そこで家庭教師をする様になったのである。
家庭教師にに対する要望は、大きく分けて二つであった。
 一は、人並みの学力まで、引き上げて欲しい。
 二は、良い学校を目指しているので、合格請負人。
 私の場合、1の子(人並みに)が三で、
2の子(良い高校へ)が4人だった。

 面白いのは1のケースなので、書くことにする。
 まず最初に来たのは、中一の女の子で、第一印象は、集中力が
ない子であった。 五~十分で、疲れてきて、やる気をなくすのである。
彼女には、まず、問題集をやらせて、その後、教える様にした。
 問題集を解いてる段階で、できなくなると、すぐ、
わかんないといって、やめてしまうのだ。
 そこで、私が、月謝もらってるのだら、もったいないよ毎回、
言う事になった。
でも、私が、払ってるんじゃないから、関係ないというのである。
 実は、どうしたら良いと困っている時、彼女がある有名人Aの
大ファンであることがわかった。 そこで、Aは、馬鹿は嫌いだよ、
やはり、賢くて、かわいくて、きれいな子が好きだと
 思うよと言うと、意外にも、そのためなら、勉強しようと
言い始めたのである。
 その後は、問題集を真剣に、やり始めたのである。
 それとともに、問題を解ける様になってきて、自信を持ってきた。
そこで、いい会社に入って、多くの給料をもらって、
Aの追っかけでもしたらいいんじゃないというと。
 真面目に、それいいねーと、真剣に、いい高校、いい企業を
目指すと、言い始めたのである。これには、さすがに驚かされた。
数か月後クラスで十番になったようで、自信をもった。
この地区の2番目の普通高校にに入って、近くの銀行に勤めて、
結婚した。

もう一人印象に残っているのは、加藤君(男子)と
佐藤さん(女子)である。
 彼らを同じ時間に、教えることになった。加藤君は、
数学以外が苦手で、記憶力が弱いのが弱点。
 一方、佐藤さんは、逆に、記憶力は強いが、数学が大の苦手であった。
 そこで加藤君に歴史の記憶問題を出して、制限時間が終わった時に、
答えてもらうようにした。 やはり、半分位の正解率が続き、
上達しなかった。佐藤さんは、方程式が、苦手で、問題を出すと、
最初、やる気なかったのだが、ある時から、急に、正解率が
高くなったのである。 なんと、私が気が付かないうちに、
答えをさっと見て、覚えていたのだった。
 二人の成績が、向上しないで困っていた時、佐藤さんが、
加藤君に、あんた、馬鹿だね、なんで、そんなの覚えられないの、
覚えようと思う気があれば、簡単に覚えられるでしょう。
 やる気がないからよと、言いはいじめたのである。
 これには、加藤君が、腹を立てたようで、真剣な顔で、
覚えるようになってきたのである。
 そして、何と、二人は、仲良くなってしまった様なのである。
 そして地区では中程度の同じ高校に入ってお互いに仲良くしていた。
 卒業後、彼は、大学へ、彼女は、近くの企業に就職した。
何と、ある日、二人に子供ができてしまって、結婚したのであった。
その後、引っ越したので、消息は不明である。
もう一人の2のケースの子は、とにかく、答えを違える子だった。
 例えば、間違える確率と、間違えない確率で、間違える確率の
方が少ないケースでも、堂々と、間違え続けたのである。
下の問題では、大抵、数回、間違えた後に、覚えるケースが
多いのである。確率的にも、間違えるほうのが難しいのである。
 それを何と、全部の間違えるパターンを、言ってくれたのであった。
 これには、さすがに、よく全問、間違えたと、ほめたいくらいだった。
 多分、教えている、私にも、全問不正解の答えを述べる方のが、
よっぽど難しいのである。
 つまり、確率的には、超難問の問題に全問正解したのと同じ位,
難しい事なのである。
 以下の英語の組み合わせをすべて答えよ、という問題に対して、
いとも簡単に、全ての不正解の組み合わせをしてくれたのであった。
ファンタスティック! すげー、こいつ、天才と、
心の中で叫んだのであった。
 具体的に言うと、英語の所有格と目的格。
      I         my        me      mine     
     you     your      you      yours
     he       his        him      his 
  she       her       her       hers




ただ、彼は、冷静な子で、純朴で、非常に性格が良く、
人の話を、ちゃんと聞く子であった。
そこで、彼に、冷静に、話すことにした。
 私は、勉強が好きで、興味あるのだが、君は、
そうでは、ないらしいと言ったのであった。
 また、私は、不器用で、気が短くて、ドジな所が欠点だと、言った。
 君はどうだと、聞くと、彼が、言うには、僕は、本当の所、
勉強は好きではありませんというか、興味がないとの事であった。
そこで、何に興味があるの、と聞くと、工作が好きで、いろんなものを、
作り上げるのが、特に、好きですと、返答してきた。
 彼の父親が、畳屋をやっていたので、継ぐ気はないのか聞くと、
あまり、その気がないと答えた。
 理由を聞くと、仕事がきつい、わりに収入が少ない点、
休みが不定期で、サラリーマンの様に土日休みではなく、
また、かっこ悪いので、女の子にもてない。
 それに、ボーナスも昇給もないと、冷静に分析していた。
 そこで、私が、畳屋は、誰でもなれるものではなく、
師匠について、修行しないとできない。
 また、お客さんに信用されないと商売にならないと話した。
 それに、畳屋も、やり方をかえて、注文を増やす努力をすれば、
儲かる可能性が高くなるのではないかというと、
確かに、それはあるかもと言っていた。
 近くで、軽トラで、団地をまわって、御用聞きをして、もうかっている
若手の畳屋もいるとのことだった。
 それだよ、君は、手先も器用だし、気が短いこともないので、
畳屋に、すぐなれるんじゃないかというと、
家が畳屋だから、その気になればね、と言った。
 君は、無理して、勉強するよりも、それで、稼いだ方が
早いんじゃないかと伝えると、それは、言えるかもと、
言いだしたのであった。
 翌週、母親と、挨拶にきて、家庭教師を受けるのを辞めて、
中学卒業したら、父親を手伝って、畳屋になると
決めたというのであった。
 私が、その方が、向いてるかもしれないと、彼の母親に伝えた。
 いままで、かっこ悪いとか、もうからないとか文句ばかり言って、
畳屋を馬鹿にしていたが、急に、儲かる畳屋になるよと、
言いだしたというのである。
 お母さんから、先生が、

人には向き不向きがあり、向いている
方を選んだ方が、合理的だと言ってくれて、息子が、
その気になったようだというのである。
 そこで、私が、若い子には、先入観だけで、好き嫌い、
かっこ良い、悪い、儲かる、儲からないを、決めつける子が多いので、
自分が成功しやすい道を選ぶのは重要な事だと話した。
その後、彼の持ち味の人なつっこい笑顔で、多くの
新しいお客さんをつかみ、彼の畳屋も繁盛してるようであった。
 また、たまに、道を歩いていると、軽トラにのって、
仕事に行く、彼に会うと、何というか、吹っ切れたような
充実した笑顔が、頼もしく思えた。

 2のケース(良い高校へ)の子は、1人は、私と同じで、
工業系をめざして、なんと、私と同じ学校の機械科に無事、入学できた。
 彼は、もともと、できる子で、やる気に火をつけることで、
自分で、成長していった子であった。ほめるたびに、
喜んで、えくぼが、現れるのが印象的だった。
 もう一人は、もともと、非常に頭の良い子で、私が、厳しく、
自分に甘えるな、常にトップをめざせと、彼に、言い続けた。
 お前の能力のわりに、成績が良くないな、手を
抜いてるんじゃないかと、げきを飛ばすたびに、
にらみ返してきたが、最後は、中学校をトップの成績で
卒業し、高校も県内トップ高に入学し、日本でトップと
言われてる大学に入った。家庭教師って、子供の興味を
引き出したり、本当にやりたいことを、明確にしてやることで、
成長していくことをあらためて、勉強させられた。


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