第十四話:お見合いの話
この工場の周辺は、ほとんどが、農家と商売人の家が、
ほとんどがサラリーマンとの兼業農家であった。
その為、この土地の女の子は、ほとんどが、都会に出ていく。
または、彼女たちは、地元の大規模農家か、それなりの家庭の
男子と見合いをして、結婚するケースが多かった。
そして、近くの商売人の家から、我が工場の技術屋さんに
見合いの話が、たまに舞い込んでくるのであった。
山下先輩は、既に三回、経験したが、いずれも結婚までいかなかった。
そんなある日、私に見合いの話が、舞い込んだのであった。
地元の農機具販売店の娘、二十一歳で短大を卒業して、
自宅で経理をしていた。
工場長から、言われた話なので、むげに断れず、
見合いをする事となった。
その日、見合いの会場と指定された高級料亭で、
その娘と会う事になった。
始めて会った印象は、気が強く、気位の高そうな感じであった。
体型も、私の好きなグラマー系ではなく、典型的な日本人体系であった。
工業長と、私が、彼女のご両親と面会して、挨拶しの会話を始めた。
そして、彼女の父親が、家の跡取りが、欲しいので、
是非、店を手伝って欲しいと、言いだしたのであった。
あまりの強引さに、そんなに急に言われても、困ると伝えた。
それに対し、父親も笑って、そりゃそうだと言った。
こんなに、強引に、結婚させたいのには、
何か、あるなと察知したのであった。
その予感が、後になって見事的中する、事件が起きたのであった。
初回の見合いでは、形式通りの話し合いで、二時間程度で終了した。
一週間後、近くの駅の喫茶店で二人で会う事になった。
デートの当日、彼女は白いブラウスと空色のスカートで現れた。
私は、彼女と少し雑談した後に、何故見合いにいらしたのと聞くので、
工場長に世話になってるからと言うと、彼女がニヤッと笑ったのである。
そして続けざまにと言う事は、私に、興味がないと言う事ねと続けた。
誠に失礼ながら、私のタイプではないと、はっきり言った。
すると、安心したように、あー良かったと言うではないか、
さすがの私も、これには、怒りを覚えた。
そして私が、直感で、あなたには、彼氏がいるんでしょと
言ったのである。
彼女は、お茶目に、その通りだというのであった。
その彼氏は、父の会社に出入りしている、
農機具メーカーのセールスマンだと言うのである。
彼女は、彼は良い人何だけれど、気が弱く、やさしい性格だと言った。
そして父の最も嫌いなタイプだというのである。
更に、彼女は、彼は、私が、いなきゃ駄目なのと言う有様だった。
彼女の方が、彼に惚れてんじゃないかよ、と心の中で、叫ぶのであった。
こりゃ駄目だ、こんな茶番劇につき合っては、
いられないと思うのであった。
そこで、彼女に、じゃー私は、どうしたら良いのですかと逆に質問した。
すると、さっきあなたが言った言葉、娘さんは私のタイプではないと、
おっしゃれば良いのよと笑いながら答えた。
わかった、早速明日にでも工場長の方から、
伝たえてもらうよと返答した。
その後、彼女は、胸のつかえが取れたのであろうか、
晴れ晴れとした顔にもどったのであった。
翌日、工場長に、お断りの電話を入れてもらった。
その数週間後、見合いをした娘さんが、誰かさんと、
駆け落ちして、姿が見えなくなったそうであった。
私は、心の中で、彼女に、うまくやれよと、励ますのであった。
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