第二十九話:新人時代、個性的な先生4-1
最後にもう一人、印象に残っている先生は、山本病院の山田先生である。 整形外科の先生でミスター・サージャリーと呼ばれるくらいの脊椎手術の名人であった。
腰が痛くて、車いす生活をしていた患者さんを手術して,1週間後には、
自分の足で歩ける様にしたりと、患者さんに、絶大の信頼を
得ている名物先生であった。
先生は、北島に、医療に携わる者は勉強しなければならないと、
看護婦さん向けの参考書をに渡してくれて勉強する様にと指示した
のである。
そんな時、あろう事か、看護婦さんと同じ試験を同じ会場で受ける
様にと,言ってきたのである。
最初、北島は戸惑い、先生に本気ですかと聞くと、先生はいつも
本気ですとの返答であった。
北島は、仕方なく受験する事にしたのであった。
緊張しながら試験会場に入ると看護婦さん達が,私の顔を見るの
であった。
恥ずかしいので下を向きながら、指定の席に座り試験を
受けたのであった。
翌週、先生に会った時、看護婦さん達の平均点と北島の点数を
見せてくれたのである。
最下位ではなかったが、下の方であった。まー、短期間の割には、
よくできた方だねと、先生が笑いながら、北島に言ったのである。
なぜ北島に、試験を受けさせたのですかと、先生に聞くと薬屋さんの
知識は、こんなもんでは、まだまだ足りないという事を理解して
もらいたかったから看護婦の試験を受けさせたとの事だった。
看護婦さんは、実際に患者さんに接する機会が多く必要な知識は多い。
それに比べ、北島君たちは先生方に、勝手な理屈を並べて、
製品の宣伝をしてくるが、宣伝するなら、もっと知識を持たなければ、
駄目だと思っていたとの事であった。
そのため、北島君が,実験台になったという事なんだよと言っていた。
確かに,先生の言うことは、理屈が、通っており、反論できないと
思う北島であった。
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