101話:長岡の友人との別れ3

 これが最後と歌い続けた。酔いもまわりはじめ早めにホテルに帰った。

 帰ってソファーに座りながら最初に出会った時の話や、
長岡のホテルでの逢瀬の思い出を語り合った。

 栄子がきっと神様が北島に会わせてくれたんだよ。
 そー、そーに違いないと酔って言ってるのか本心で言ってるのか、
わからないが真剣なまなざしで話し続けた。
 でもね後悔なんて、ちっともしてないよ。
 むしろ感謝してるくらいさ。
 だってこんな経験、そんなに誰もが、できることじゃないしね。
 そして、あと腐れなく、さっぱりと、きれいにと言うと、
また大声で泣きだした。

 大声出すなよと北島が言うと、ごめん、でも泣きたいんだよ。
 今夜はとっても泣きたいんだよと北島に抱きついてきた。
 泣きながら、しっかりと最後になるであろう逢瀬を十分に楽しんだ。
 そして知らぬ間に、お互い爆睡した。翌朝、栄子は、さっぱりとした
顔で北島さん、こんな栄子に、つき合ってくれて、ほんとにありがとう。

 栄子は、これから普通の主婦になって脇目もふらずに生きていくよ
約束すると言い、また例の指切りげんまんをした。
 だって、こんな楽しい思い出をつくってくれたんだもんと、
さばさばした感じで、きっぱりと言った。

 栄子は今日は本当に送らなくていいからと北島に告げて
今回は駅まで一人で歩いて行くからと言ったのだ。
 北島は何か送ってこないでと振り切られた様な気がして、
そのまま黙ってうつむいた。

 栄子が別れ際に深々と頭を下げ、いろいろ、お世話になりました。
 それでは、お元気でと言って早足で、部屋を出て行った。

 なんか、むなしさというか、おかしさというか、
妙に爽やかな気がする北島だった。

コメント

このブログの人気の投稿

うまい日本酒の話1:越乃寒梅

Episode 35: Friends of the rehabilitation hospital

Educational reform by enriching children's halls nationwide