112話:多摩営業所での歓迎会2

 山梨県は、よそ者を受け入れない厳しい土地柄で新規開拓は非常に
むずかしいと弱音ばかり吐いていた。田中所長の計画では、いずれは清水君
の後任として北島に頼みたいとの意向だった。
 その晩、北島の歓迎会が始まった。北島が自己紹介を終えて歓談が
始まった。清水君が、やり手の北島君がくれば多摩も伸びて良いんじゃない
ですかと嫌みな言い方で敵意むきだしだった。

 その他のメンバーは、総じて好意的で新人の足立君は所長に入れ
知恵されたのか驚異的な実績を残した北島先輩の営業方法を学んで、
できる営業マンになりたいですと歯の浮く様な、お世辞を言った。

 二次会はスナックすずらん、立川でも、奥まった目だたない店だった。
ベテランママのさおりはで相手の弱点を探す出す名人と評判のやり手だ。
 北島が所長に紹介され自己紹介しようとするとママは軽く手で制止し北島の顔をじっとみつめ手相を見た。 北島さんは意外としたたかだねと不適な笑みを浮かべた。所長うかうかしてると寝首をかかれるよと言った時、
所長の顔が突然曇ったのを北島は見逃さなかった。

 変な空気になったので、マイクを取って、得意の洋楽の歌を披露した。
 彼の歌は大受けであり店の女の子も釘付けになった。その後、宴も
たけなわになり他の人の歌に合わせて店の女の子と次々に踊った。
 帰り際、店の女の子のハートをしっかりつかんだ様で、
うっとりとした目つきで送り出してくれた。

 ただママは目を見開いて笑ってはいるものの内心、面倒くさい、
お客さんだなって思っている様に見えた。
 その後ママに文字通り面倒くさい騒動に巻き込まれる、
とは初対面では想像もできない北島だった

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