長岡でのアバンチュール

佐藤君は、かなり眠そう、というか、半分寝ていた。店を出て、
佐藤君が、ホテルに帰りましょうといった。
しかし、栄子さんが、私は、ちょっと疲れたから、
コーヒーでも飲みたいなーと。
そこで、我々のホテルの、スナックは、夜遅くまで、
やっているので、
行くことにした。
ホテルについて、佐藤君が、ごめんなさい、眠いので失礼しますと、
部屋へ上がってしまった。

コーヒーとケーキのセットを頼んで、話し込んだ。
早苗さんが、北島さんて、歌もうまいし、踊りも上手で、
女の子にもてるでしょうと、笑いながら話した。
いや、それもこれも、仕事の為の覚えたんですよと答えた。
仕事のことを聞かれ、話すと、医療系の営業さんですか、
どおりで、お上手な、わけだと笑っていた。
私が、いや、あなた方こそ、歌がうまいし、踊れるし、
もてるんじゃないというと、そんなことないよ。

ここらでは、不良の娘じゃないかと、むしろ、
白い目で見られるくらいですよ、と言っていた。
いやすごいよ、私も、いろんな若い人にあったが、
こんなに、のりの良い、女の子に会ったのは、
新潟に来て、2年になるが、初めてだよと言った。

静かだった栄子が、おもむろに、それなら、また、遊びに来てよと。
いやね、実は、今日は、私の送別会なんだよ。また、長野へ
転勤なんだよというと、急に不機嫌になって、そーなの。
それなら、今日が、最初で、最後なのと、
ちょっと、怒ったような目で、言い放った。
ごめん、と言うと、名刺をちょうだいと言われ、名刺を渡すと、
彼女が、そこにあった、紙ナプキンに、彼女の連絡先(勤務先)を
書いて渡してくれた。
彼女が、転勤後の移動先を連絡してよと、強めの口調で言ったので、
わかったと答えた。
また、私、旅行がてらに、長野へ行くかもしれないからねと、
含み笑いを浮かべて話した。
食べ終わって、早苗が、眠くなったので、お先に失礼しますと、
送ろうとすると、大丈夫、近いから、自分で帰れると、帰っていった。

その後、学校時代の話、歌の話、雪国の生活の話、など、
栄子は、堰を切った様に、話し始めた。
そこで、私が、ビールを出してきて、また、飲みはじめた。
彼女は、笑わないで聞いてよね、実はね、小さい頃、
いつか、白馬の王子さまが、あらわれて、
私を救ってくれる話が好きで、何度も何度も、繰り返し、
その本を読んだんだ、と、懐かしそうに、話していた。

その後、うまいウイスキーあるから、飲もうと言い、
氷を冷蔵庫からだし、水割りにして、飲み始めた。
そして、1時を過ぎた頃、彼女が、酔っ払ってきて、
今晩は、このまま、帰りたくないというので、私のホテルの部屋で、
長岡の最後の夜を、惜しむように、情熱的な夜を過ごしたのである。
冬の雪国の寂しい夜は、男も女も、ぬくもりが、
恋しいと言う気持ちは、わかる。
ましてや、自分が好きだと思った人なら、こうなるのも、
良く理解できる気がした。
早朝、彼女は、スッキリした感じで、ありがとうといって、
颯爽と、立ち去っていった。

その翌週、新潟営業所の送別会の時が来て、
また、仲間と別れることなった。
これが、サラリーマンの宿命だと、強く感じる、北島であった。
特に、スナックあゆみのママが、別れ際に、言った、
あんたは、「女に気をつけろ」の言葉が、胸に突き刺さった。

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