47話:雪女が山から下りてきた1


 新潟の短い夏が過ぎ秋風が吹き、やがて十一月になると時雨れてきた。
 新潟内陸の峠道は雪が積もりはじめる。
 そのため雪用のタイヤで出かける日も多くなった。
 いつもの様に、長岡、小千谷、十日町と、まわり近くのスナックで
飲みながら夕食をとった。定宿のホテルに帰りシャワーをあびて
寝ようとした時、トン・トンとドアをノックする音が聞こえた。 
 北島は落ち着いた声で、こんな時間に誰ですかと言うと
女の声で私よ私。 



 誰と言うと、とにかく寒いからドアを開けてと言うではないか
 ドアの小窓から覗いて見ると目を疑った。
 スナックの女だ。ドアをあけて中に入れてよ。
 何だよ藪から棒に小声だが、ちょっと怒った声で言った。
 なーにね、あんたが店に来てから気になってしょうがなかったんだよ。
 だから、あんたの定宿を調べて来たって訳さ。
 早くドアを開けなと言った。その勢いに負けて部屋に入れてさっと
ドアを閉めた。だから何の用だよ。
 女は何、野暮な事言ってるんだよと言うだけだった。
 今、亭主が出稼ぎにいって一人ぼっちで寂しいんだよ。
 だから、こんな夜は無性に切なくて寂しいだ。
 北島は、なんて答えたら良いか迷って、ぼー、としていた。

 そんな事には、お構いなく女は北島の胸に飛び込んできた。
 酒と化粧の臭いが鼻をついた。
 太い腕と柔らかくて豊満な胸が飛び込んできた。

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