88話:上山田温泉で芸者をあげる2

 北島が支払いはと支店長に伺うと東京支店の方に請求書を
まわとしてと、言った。

 詳しく聞くのは失礼と思い、お礼だけを述べた。

 その後、清水君の耳に支店長の武勇伝が伝わった様で
偉くなる人は元気でスタミナ抜群なんですねと言っていた。

そう言う話は広がりやすいので、もちろん口止めしておいた。

 松本赴任の四年目は松本営業所を開設し売上も
三年連続十%以上と絶好調だった。

 今年の臨時ボーナス百七十万円、報奨金五十万円と
通常ボーナスが百二十万円、給料が五百五十万円、
出張+外勤手当が百四十万円、合計一千三十万円と
ついに念願の一千万円を超えた。

 北島がプロの営業マンとして、やっと認められたのだと思う
と数々の苦労が走馬燈の様に頭の中を駆け巡るのだった。

 思えば身重の身体で転勤して一週間出張で家に帰れない日々を
愚痴もこぼさず、子供の病院、幼稚園、買い物、炊事、洗濯を
して、家を守った女房の給料も、この中に入っているんだと
思うと自然とあついものが、こみ上げてくるのだった。

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